あらすじ
父親を交通事故で亡くし、さらには母親も亡くしてしまった主人公の柏木聖輔は、ある偶然から商店街の総菜屋「おかずの田野倉」でアルバイトをすることになる。
両親を亡くし、孤独な日々を過ごしていた聖輔は、様々な「ひと」とのつながりによって、自分の居場所を見つけていく。
本書の名言
ここでは、本書を読んで印象に残った言葉を紹介させて頂きます。
ここからはネタバレを含みますので、ご注意ください。
人に頼ることも大事
いいの。「困ったときは借りられる。そう思っておいて。一人でがんばることも大事。でも頼っていいと言ってる人に頼るのも大事」
聖輔の大学時代の友人の母親いよ子は自宅に聖輔を招き、昼食をふるまってくれました。
この言葉はそのときに聖輔に言ってくれた言葉です。
彼女は、両親を亡くして大学も中退してしまった聖輔のことをとても心配していたのです。
実際に頼るかどうかは別として、こういう優しい言葉をかけてもらえると、張り詰めた心が楽になるのではないでしょうか?
作中の聖輔は、必要以上に他人を頼らず自分の力でなんとかしようとする性格のように感じました。
もちろん人に頼り過ぎるのもダメだと思いますし、聖輔のように、自分でなんとかすることはとても大事です。
しかし、本当に苦しいときや、どうしようもないときは、人に頼ることも重要なのだと思います。
「ひと」に代わりはいない
大切なのはものじゃない。形がない何かでもない。人だ。人材に代わりはいても、人に代わりはいない
物語の終盤での聖輔の言葉です。
日常生活の中で大事なことを決めるとき、お金の問題やしがらみ、そして世間体などの様々な要因があります。
ですが、最後のところで重要になってくるのは、結局のところ「ひと」なんだなぁと思いました。
この物語の中で作者が最も伝えたかったのは、このメッセージだったのではないでしょうか?
全体の感想
物語の序盤では、両親を亡くして孤独な状態の聖輔が主人公だったため、悲壮な展開になるのかなと思いました。
しかし、実際に読み終わってみると、大きな悲しみの描写は少なく、淡々と物語が進んでいった印象です。
この小説では、とにかく多くの「ひと」が登場します。
聖輔の力になってくれるひと、聖輔を利用しようとするひと、聖輔を尊敬してくれるひと、その他にも沢山の人と聖輔は関わっていきます。
そんな中で、聖輔は「大切なのはものじゃない。形がない何かでもない。人だ。人材に代わりはいても、人に代わりはいない」という考えに至ります。
この物語を読んだ後は、日ごろの自分が、周囲の人を思いやれているか、大事にできているかを考えてしまいました。
全体として、大きな展開は無く、淡々と物語が進んでいきますが、心温まる物語ですので、皆さんにもおすすめしたい本です。
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